祈りの島、自然と寺と共にある暮らし
and KIMONO
ちへい
Tsuruto Magazine 02
祈りの島、自然と寺と共にある人々の暮らし
日常。特別なことはなく、意識せずとも行われる一つのあり方。美しく、磨かれたその慣わしには深いものがある。
青々と力強く葉を広げる植物たちに囲まれる川べりの道、心地よい涼水を感じながら進む。
いくつもの滝が流れるその清流へ、着物から生まれ変わったシャツをそっと放ち、川の流れに身を委ねてみた。
バリ島東部、霊峰アグン山の懐に抱かれたブサキ寺院。バリ・ヒンドゥーの息づく総本山であり、「母なる寺」として人々の信仰の源流であり続けている。その起源は8世紀から10世紀のいにしえへと遡り、幾重もの時を超えて、巡礼たちの祈りを受け止めてきた。
この聖域に足を踏み入れるとき、人はその身をそっと整える。男性は頭に白いウドンを授かり、誰もが腰にサロンを巻き、腰帯を固く結ぶ。身装を調えるその一瞬から、大自然と神々へ捧げる静かな祈りが始まっている。
Chihei Journal
バリ島・バカスの田舎を散歩していた私たちの目の前に、立派な寺のような建物が何度も現れた。ローカルの人に聞くまでは、それが何か特別な施設なのだとばかり思っていた。けれど、それが Sanggah(サンガ)と呼ばれる家寺で、どの家にもあるものだと聞いた時、その驚きがあまりに大きく、はじめは素直に信じることができないほどであった。
バリの風を切り、バイクで走り続けている間に何度も出会った光景。女性たちが頭に「ソカン」や生活道具をのせ、ゆっくりと歩みを進める姿だ。それはバリの豊かな風景に美しく溶け込み、この島に息づく日常の暮らしをそっと覗かせてくれる。
自然と神がすぐそばにある。満ちゆく空気の中、毎朝焚かれるお香の煙が広がっていた。
Chihei journal
毎朝、竹で編まれた小さな箱「ソカン」が開かれる。中から現れるのは、ヤシの葉の箱に色とりどりの花を飾ったお供え物、チャナン。バリの人々にとって、祈りは特別な行事ではない。小さな箱に季節の花を摘み、香を焚き、今日という日に感謝を捧げる。それは息をするのと同じくらい、自然で愛おしい日々の営みである。バリの田舎に流れる暮らしの豊かさを感じた。
旅の途上、バイクを走らせていると、サロンを身に纏い、頭にソカンをのせた女性たちが賑やかに行き交う姿が目に止まった。楽しげな歩みの後を追っていくと、たどり着いたのはある家族の邸宅。明日行われるという、息子の「18ヶ月の儀式」に向け、近所の人々が集い、ワイワイと笑顔で準備を進めている最中であった。思わぬ訪問者である私たちを、彼らはとびきりの笑顔で快く招き入れてくれた。
「日本が好きだ」と親しげに言葉を交わしながら、運ばれてくるバビグリン(豚の丸焼き)や贅沢なご馳走。厳粛な緊張感とは真逆の、あたたかな笑顔と活気に満ちたアットホームな祝祭の輪の中に、私たちもあっという間に包み込まれていった。
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