【着物の色】赤系統の色彩について|日本の美しさを現代にリメイクした事例もご紹介
ふと目にした美しい赤系色に、心が惹きつけられることはありますよね。赤系の茜色は、日本最古の色として藍と並ぶほど、長く愛されてきた色なのです。また、古来より赤は特別な意味を持ち、平安時代には高貴な身分の象徴として尊ばれ、婚礼などのおめでたい席で欠かせない色とされてきました。
現代においても、赤を身に纏うことは、単に美しい色をまとう以上の喜びがあります。
本記事では、日本における赤系統色の歴史的由来や文化的意味を掘り下げるとともに、現代におけるお洒落な着こなしや、赤の着物地を使ったリメイク事例についてもご紹介します。

赤の意味、赤の着物
晴れの日を象徴する色である赤は、火や太陽の色であり、古くから日本の美意識において特別な地位を占めてきた色のひとつです。祝いの色・魔除けの色として、日本人の暮らしに深く根付いてきた理由の一つに、農耕民族としての太陽信仰が関係したとも言われています。
現在でも、赤系色の着物を着用することが多くあります。
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祝いの色としての「赤」
成人式で華やかに女性を彩る振袖、結婚式の花嫁を包む絢爛豪華な打掛。これらに用いられる赤は、人生の門出を祝う最高の吉兆を表します。特に婚礼衣装の赤は、花嫁の純粋さや、これから始まる新しい人生への希望を象徴し、華やかという言葉にふさわしい雰囲気があります。また、初着(うぶぎ)や宮参りの着物にも赤が多用され、赤ん坊の健やかな成長を願う親心、魔から守る願いが込められています。
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魔除けの色としての「赤」
厄除けや健康長寿の願いを込めて、還暦のお祝いに赤いちゃんちゃんこを贈る風習は有名です。これは赤が邪気を払い、生命力を高める力を持つと信じられてきたからでしょう。着物の裏地、特に襦袢に赤が用いられることも多く、これは見えない部分で身を守る、粋な魔除けの意味合いが込められています。

「赤」の多様な和名とそれぞれの持つ繊細なニュアンス
一言で「赤」と言っても、日本の伝統色には実に豊かなグラデーションがあります。それぞれの色名には、自然の風景や植物、あるいは時間の移ろいが繊細に表現されており、その奥深さに触れることは、日本の色彩美学を深めることに繋がります。
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茜色
あかねいろ
#B7282E
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日本最古の赤系色。夕焼け空の色に近く、ややくすんだ赤でほのかな黄み。染料は、温帯アジア原産の茜という植物の根から。「茜雲」や「茜トンボ」など、茜色が長く親しまれてきたことが伺えます。
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紅
くれない
#C22047
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日本の色文化を代表する鮮やかな赤。紅花を原料とし、薄く染めれば桃色、濃く染めると深い赤に。平安時代から女性の口紅や頬紅としても使われ、女性的な美しさを象徴する色ともされてきました。
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朱
しゅ
#E94709
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鳥居や神社仏閣に塗られる、黄みを帯びた明るく鮮明な赤。鉱物の辰砂(しんしゃ)が原料。古代から神聖で魔除けの力があるとされてきました。朱肉や印鑑にも用いられ、伝統的な生活に深く根付いた色。
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緋
ひ
#C73C2E
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やや黄み含む鮮烈な赤。かつてはアカネ科の「緋草」から抽出されましたが、後に紅花染めも使われるように。江戸時代には武士や高官の装束に好まれ、高貴さや権威を示す色として広まりました。
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臙脂
えんじ
#9B003F
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紫みを帯びた濃厚な深紅色。古代には、昆虫の「エンジムシ」から染料が採られました。江戸時代以降、着物や帯などに多く使われ、現代では広く親しまれる落ち着いた品格ある色です。
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蘇芳
すおういろ
#94474B
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マメ科の「蘇芳」の幹の芯を原料とし、紫を含む深く落ち着いた赤。奈良時代に日本へ伝わり、江戸時代には手頃な染料として盛んに。控えめな品の良さを漂わせる赤系色として、広く愛用されています。
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紅は、呉の藍
原料を紅花とする紅(くれない)の原産地は、中近東、エジプトですが、四〜五世紀ことに、中国を経て日本の伝えられました。それにより、日本最古の赤系色である「茜」が、紅花を用いた紅色に主役の座を譲ることに。当時の中国を「呉(くれ)」と読んでおり、「呉の藍」と称され、言葉の変化で「くれない」という音に変化したとされています。
色そのものの美しさだけでなく、由来や名前も知るとより楽しいですよね。
赤系統の色を取り入れる

赤一色はステキでも、なかなか抵抗感があることも。着物の場合には帯や小物でコーディネートしたり、着物リメイクの衣服の場合にはトップスやスカートのアイテムとして着用したり。赤系統をうまく合わせるカラーコーディネートをご紹介します。
百合
一重梅
落栗色
紅葉
赤系の染料が持つ特性とケアについて
赤は、特に色落ちや色移りがしやすい染料の一つです。着物の場合は、洗うことはないと思いますが、着物リメイクの洋服の場合には、ご自宅で洗濯を検討するかもしれません。ぜひ、赤の着物地の特徴を理解した上で、ご家庭でのケアを行いましょう。
- 染料の特性: 紅花や茜など、植物由来の染料を用いた赤は、水や摩擦に弱い場合があります。また、紫外線による色あせも起こしやすい傾向にあります。
- 水に通すと: 赤色系統の着物地は、水に通すと色落ちすることがよくあります。生地自体の色が掠れることの心配もそうですが、他の衣類への色移りがより心配です。赤色の着物地をお洗濯する場合には、単独でのケアがおすすめです。特に、赤の着物の色鮮やかさを保ちたい場合には、クリーニングへ出すことを推奨します。
着る機会が減った美しい赤の着物を新たな形にリメイク
美しい着物の良さを実感するには、纏うことこ。私たちはそれが大切だと考えています。時を経て、着用することがなくなった大切な赤の着物を、リメイクしたお客さまの事例をご紹介します。
当店で赤の着物リメイクする際、衣服へのリメイクでおすすめなのがスカートへのリメイクです。ボトムスアイテムへのリメイクをすることの良い点は、華やかさを気軽に纏いやすいからです。もちろん、ワンピースも素敵ですが、少し冒険したい時の品ある一着になります。また、ショールやバッグといったアイテムですと、着物と合わせお使いいただくこともあります。

ワンピースへの仕立て直しの場合には、ノースリーブですとよりドレッシーな雰囲気に。また、赤の見える部分が少なくなる分、着やすさがアップします。
「つると」では、お客さまの大切な着物を、熟練の職人技とお客さまの想いを込めて丁寧にリメイクしています。中でも月ドレスは、シンプルなAラインのワンピースが故にきれいな縫製技術が求められます。お客さまの大切なお着物から生まれ変わった事例の一部をご紹介します。
正絹のお着物から製作

お客さまが若い頃に自分でお仕立てしたというお着物。正絹の柔らかな生地感と程よい着物地の厚さが、Aラインワンピースと相性がよく、素敵な仕上がりに。リメイクすることで、着物を着る際の若い頃の赤色という認識が薄れ、再び袖を通すことのできる一着に。模様の流れも活かすようお仕立てしたワンピースです。
お着物:正絹
生地感:程よく柔らかな質感
使用した用尺:長着一枚を使用
着物リメイクサービス「きもの時季」は、お客さまの大切な着物を最大限に活かし、再び日常で愛用できる形へと生まれ変わらせます。単に形を変えるだけでなく、着物に込められた物語やお客さまの想いを新たな一着に吹き込みお届けします。もし、タンスの奥で眠っている赤の着物に、新たな命を吹き込みたいとお考えでしたら、ぜひ「きもの時季」をご検討ください。
よくある質問(FAQ):赤の着物に関する疑問
- Q1: 赤い着物は派手に見えませんか?年齢を重ねてからの選び方は?
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いいえ、垢にも様々なトーンがあり、決して派手に見えると一概には言えません。年齢を重ねた大人の女性には、深みのある赤や、落ち着いたトーンの赤が大変よく似合います。例えば、ワインレッド、エンジ色、蘇芳色のような赤は、品格と知性を感じさせ、大人の艶やかさを引き出します。また、リメイクすることで、若い頃に着用した赤の着物でも、もう一度着用できるアイテムに仕上がります。
- Q2: 祖母の古い赤い振袖がありますが、今でも着られますか?
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はい、もちろんお召しいただけます。お祖母様の赤い振袖は、まさに世代を超えて受け継がれる宝物です。一点ご注意いただきたいこととしては、昔の赤の着物ですと、水に通すことで色落ちが激しい場合があるということです。お洗濯の際、他の衣類と一緒にしなければ問題ございませんが、少しケアを気にする必要がございます。
- Q3: 赤い着物に合わせてはいけない色合いはありますか?
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基本的に「絶対に合わせてはいけない」というものはありませんが、着物と帯、小物の色のバランスが重要です。白、生成り、黒、あるいは着物の柄から一色取った落ち着いた色の帯や小物を合わせると、まとまりが良くなります。
- Q4: もし着られなくなったら、赤い着物はどのようなものにリメイクできますか?
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赤い着物は、その鮮やかな色と美しい柄を活かして、様々なアイテムにリメイクできます。例えば、華やかなロングドレスやチュニック、エレガントなスカートなど、洋服として日常に取り入れることができます。また、パーティーシーンで映えるクラッチバッグや、普段使いできるトートバッグ、ショール、クッションカバーなど、小物として生まれ変わらせることも可能です。お子様やお孫様がいらっしゃる場合は、小さなお子様用のジャンパースカート、雛人形のお衣装などにリメイクし、思い出を繋ぐこともできます。
参考図書
- 「色の名前の日本史」|中江克也|青春出版社
- 「日本の色を知る」|吉岡幸雄|角川文庫
- 「配色辞典」|和田三造|青幻社
- 「かさねいろ」| ピエ・ブックス







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