黒が美しい「上質な生地」。着る機会の少ない黒留袖や喪服を日常に楽しむ着物リメイク
当店にリメイクを依頼くださるお客さまから、よくお預かりするのが黒留袖や喪服。リメイクすることで、ハレの日の装いや喪服のワンピースとして、再び着用することができます。「タンスに眠ったままであったらもったいない!」と思う程、黒の着物地の良さがあるのです。現代のライフスタイルにふさわしい洋服へと生まれ変わることで、もう一度袖を通す喜びを感じることができます。本記事では、黒留袖や喪服を洋服へリメイクする魅力や実例をご紹介します。
黒留袖をリメイクする最大の利点は、アイテムによって結婚式や成人式などのフォーマルな場面で着用することができるだけでなく、日常のコーディネートに合うものに仕立てられるということです。例えば、長袖のワンピースはフォーマルのシーンでも素敵な一着に。チュニックへリメイクすることで、普段使いの洋服として活用することができます。
黒留袖のフォーマルにリメイク
黒留袖をフォーマルなドレスへリメイクした事例をご紹介します。画像のように、身頃部分は黒留袖の生地を使用し、切り替えたスカートに模様を配置することで上品かつ華やかな印象を与えています。
黒留袖のカジュアルにリメイク
黒留袖をカジュアルな洋服へリメイクした事例では、ワンピースやチュニックが人気です。カジュアルといっても、日常使いにすぐれているということであり、上品さは保たれた仕上がりになるのが、黒留袖をリメイクする特徴です。
喪服も黒留袖同様、リメイクすることで新たなカタチへ変身します。無地のため、普段使いの洋服として着用することがイメージしやすいのではないでしょうか。写真のワンピースは、フォーマルな一着に。アクセサリーや小物をプラスすることでより幅広くコーディネートを楽しむことができ、とっておきの黒の洋服になるでしょう。
写真のコートワンピースは、夏の絽の喪服を用いて製作しました。黒でも少し透け感があるため、重たくなりすぎず、コーディネートをお楽しみいただけます。
関連記事:夏に着る。着物や浴衣を涼しげなワンピースとブラウスにリメイクした実例集。
1.お気に入りの模様を余すことなく
【デザイナーコメント】
華やかな模様の黒留袖を、3点のアイテムへリメイク。写真の月ブラウスと、きものサコッシュは、ケアのことを考え、ブラウスには刺繍部分を使わずにバッグへ用いるようにお仕立て。もう一点は、黒の部分を生かしパンツを製作しました。お客さまのお気に入りの模様部分を使い切るようにリメイクした事例です。
2.優しさやクラフト感を感じる黒留袖のパンツ
【デザイナーコメント】
黒留袖の後見頃の模様を、パンツの前側裾部分に配置。模様にほどよい抜け感があり、また落ち感の良い生地でシルエットが綺麗に出たイージーワイドパンツに仕上がりました。
3.喪服を少しデザインのあるドレスに
【デザイナーコメント】
黒の喪服は、とても生地として普段使いしやすいですよね。この事例では、エレガントなVネックや結べるウエスト部分、スリットの入ったスリーブと、デザインがあるハクロドレスを製作。黒無地のため、生地の表情を最大限に活かすようなパターンをおすすめしています。
番外編.黒がベースの振袖をリメイク
着物地のベースが黒の振袖は、意外と多くあります。写真のワンピースは、地模様の入った黒に、金の大胆な模様が描かれた振袖からリメイクしました。振袖からリメイクする大きな利点が、生地をたっぷりと使うことができることです。そのため、振袖から数点のアイテムを製作するケースもあります。その他、振袖からのリメイク事例は、こちらにてご覧いただけます。
関連記事:眠ったままの振袖を、特別な一着に。振袖リメイクの魅力と事例
黒留袖や喪服を洋服へリメイクすることで、新しい命を吹き込み、着物であった頃よりも着用する機会が多くなるものへ再生させることができます。着物地が上質であるからこそ、リメイクすることで現代のライフスタイルにも調和します。また私たちは、黒留袖や喪服をリメイクする3つの意義があると考えています。
- 黒留袖や喪服は、上質素材
- コーディネートが幅広くなる
- 環境配慮とサイクル
黒留袖や喪服は、実は洋服に理想的な上質素材
デザイナー目線:黒留袖や喪服生地の品質・特性とは?
黒留袖や喪服は、主に正絹が使用され、しなやかさと上品な光沢が特徴です。また、しっかりとした織りのものが多く、生地そのものが長持ちする耐久性を備えており、洋服リメイクに最適といえます。特に黒留袖は、黒地に細やかに施された模様がきもの時季ならではの、かつて着物であった名残を品よく残すこともできるのです。
絹地の風合い、着心地の良さ
正絹生地は質感が柔らかく、肌に優しいのが特徴です。また、リメイクするアイテムしだいでは、四季を問わず快適に着用できます。縮緬の生地が多いので、重たく見える黒の印象とは異なり、
着心地の良さを感じられるものが多くあります。
洋服デザインの際に意識するポイント
当店のデザイナーは、着物本来の模様や生地感を最大限に活かしながら、現代のライフスタイルに合うシルエットや機能性を重視しています。また、着物地の幅は、通常のお洋服の反物よりも狭いため、着物をリメイクするためのオリジナルデザイン・パターンを製作しています。
そのため、着物リメイクであっても、コーディネートを楽しめるアイテムとなっております。
黒の着物地ならではのご注意点
ひとつ注意していただきたいのが、「お洗濯」についてです。黒留袖は、水に通すことで黒部分の染料が、模様部分に色移りすることがあるため、あまりご自宅でのお洗濯が向いていません。また、喪服も黒部分の染料が落ちてしまうことがあります。個体差はあるものの、黒が掠れたようになってしまうため、ご注意が必要です。黒留袖は繊細な模様が多いため染めに出すことが難しいですが、喪服の場合は、黒染めを専門業者へ依頼ができるため、黒留袖よりもお手入れが簡単であると言えます。
上質さと環境配慮
着物地が上質であることは、この記事内で言及していましたが、それと同じくらいの着物リメイクの魅力がもう一つあります。それは、着物リメイクが地球環境にも優しい選択であるということです。既存の素材を活用することで廃棄物を減らし、また、長く使えるデザインを選ぶことで持続可能なライフスタイルの実現に貢献します。
着物が循環していくこと
昔は、着物が最終的におしめや雑巾となっていたということを聞いたことがある方は多いと思います。ですが、今の生活様式では、そのサイクルをなかなか考えにくく、実践までは難しいかもしれません。そこまで使い切ることは難しくとも、まずは着物をほどき、新たな衣服にすることは、まだ実践可能な気がしませんか?
着物を着るということが少ない現代でも、受け継がれた着物の模様や素材感が気に入っていれば、次に活かすことができます。ぜひ、着物をどうするかを悩んだら、着物リメイクを検討してみてください。
よくある質問:着物リメイクの疑問に答えます
- Q1. リメイク可能なデザインやアイテムは?
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ワンピース、スカート、ブラウス、ジャケット、バッグといった多彩な選択肢があります。着物の状態や用尺に応じて適切な提案をいたします。
- Q2. リメイクの費用や期間は?
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料金はデザインやアイテムによりますが、2万円〜7万円が目安です。また、依頼から完成まで通常4〜6ヶ月かかります。
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