江戸庶民を支え続けた「千鳥うちわ」、ものづくりの魅力。
「自分は人のために何ができるんだろう?」
「ものづくりはどんな形で社会のお役に立てるんだろう?」
連日のコロナの影響が広がり続けるている最中、そんなことをよく考える。
自分の中で何かがすり減っていくのを感じる。
今回の「職人の手と 」では、職人(見習い)の私が作っている千鳥うちわの歴史と、ものづくりの魅力について私なりの考えを書こうと思う。
千鳥うちわのルーツは南北朝時代、明(みん)より倭寇(わこう)が持ち帰り、京都宮中から庶民に広まったと言われている。
江戸時代初期、日本橋に渡った千鳥型が江戸庶民を魅了し、生活に溶け込みながら人気を博した。
独特の優雅な千鳥型フォルム、一枚のうちわに約100本敷き詰めた極細の竹骨が浮かび上がる、精巧なシルエットや絵柄が特徴。
現在では全国的に見ても最後の職人さんが埼玉県越谷市にいる。半世紀以上この土地でうちわを作り続けており、その職人の手から生み出される作品は、都心の百貨店を中心に販売され長年多くの方々の手に渡ってきた。
ものづくりの魅力は何なのか。
「ものを作る力」は「生きる力」だと思っている。
少し昔のことを想像してみる。
千鳥うちわを作るために使用されている材料は、木・竹・和紙だ。
先人は生活するために必要なものを木や竹で形作り、ものを書くために和紙を作った。それは自分が生きるために、自然素材の特徴を活かしながら様々な「材料」を作ったのだろう。やがて人はそれぞれの材料を組み合わせた「道具」や「作品」を作り始める。
その行動は自分のためだけではなく、誰かのことを思って作ることもできる。
多くの日本の伝統工芸品は素材の特徴を十分に活かしながら、使う用途に応じて上手に設計されている。
それを受け継ぎ、仕事にしているのが「職人」という人達なのではないだろうか。
職人は誰かのことを思ってものづくりをする。
植物として生きていた「自然素材」、先人が生きるために使い始めた「材料」、誰かを思って作った「道具」や「作品」、それを後世に受け継ぐ「職人」。
そんなことを考えるとものづくりには魅力が詰まっている。
私も職人として生きる力を付けながら、大切な人やまだ見ぬ誰かのために、ものづくりを続けていきたい。
まだまだ長引きそうなコロナの影響。
職人でなくとも、自分のことはもちろん、自分以外の人のことも思うことは、生きる力なのかも知れない。
朝のしっとりとした春時雨の音がやさしく響く藤田の書斎より
執筆者:藤田昂平
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執筆者が活動するチーム
クリエイティブシェルパ:ものづくりの隠れた才能を多彩なコラボレーションで世に出す表現集団
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